令和5年度税制改正で株式譲渡による税負担が増加!?

令和5年度税制改正で株式譲渡による税負担が増加!?

はじめに2023年12月16日に「令和5年度税制改正大綱」が公表されました。今回の税制改正の中に、「高所得者に対する税負担の強化」が盛り込まれております。

本記事では、当該税制改正内容と今後のM&Aに与える影響について解説致します。なお、文中の意見に渡る部分は筆者の個人的な見解となります。

1. 現行税制における取扱い現行税制における取扱い

まずは、現行税制において、個人(日本国内の居住者)が第三者に対して非上場株式を譲渡して対価を得た場合の税負担について解説します。

現行税制において、非上場株式を譲渡した場合は、譲渡対価から取得金額(付随費用含む)を控除した株式譲渡益の金額に対して20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%の合計)の税負担が発生します。

例えば、2億円で取得(設立)した会社の株式を20億円で売却し、売却に際して手数料1億円を要した場合の税負担は以下のとおり、3.45億円となります。

株式譲渡益17億円*1 × 税率20.315% = 税負担3.45億円
*1:17億円(=譲渡対価20億円 - 取得金額2億円 - 付随費用1億円)


2.令和5年度税制改正内容令和5年度税制改正内容?

次に、令和5年度税制改正内容について解説します。
以下は2023年12月16日に公表された税制改正大綱本文となります。

<極めて高い水準の所得に対する負担の適正化>

その年分の基準所得金額から3億3,000万円を控除した金額に22.5%の税率を乗じた金額がその年分の基準所得税額を超える場合には、その超える金額に相当する所得税を課する措置を講ずる。

  • (注1)
  • 上記の「基準所得金額」とは、その年分の所得税について申告不要制度を適用しないで計算した合計所得金額(その年分の所得税について適用する特別控除額を控除した後の金額)をいい、「基準所得税額」とは、その年分の基準所得金額に係る所得税の額(分配時調整外国税相当額控除及び外国税額控除を適用しない場合の所得税の額とし、附帯税等を除く。)をいう。
  • (注2)
  • 上記(注1)の「申告不要制度」とは次に掲げる特例をいう。
    ①確定申告を要しない配当所得等の特例
    ②確定申告を要しない上場株式等の譲渡による所得の特例
  • (注3)
  • 上記(注1)の合計所得金額には、源泉分離課税の対象となる所得金額に含まないこととする(NISA制度及び特定中小会社が設立の際に発行した株式の取得に要した金額の控除等の特例において非課税とされる金額も含まない。)
  • (注4)
  • 上記の改正は令和7年分以後の所得税について適用する。

具体的に、「2.現行税制における取扱い」の例を基にすると、税制改正後の税負担は以下のとおり、3.98億円となります。

<判定>

(株式譲渡益17億円―3億3,000万円)×税率22.5%=3.08億円(A)
株式譲渡益17億円×15%=2.55億円(B)
(A)>(B)のため、本制度の適用対象

<税負担>

現行税制による税負担3.45億円 + 追加税負担0.53億円*2 = 3.98億円
*2:上記(A)から(B)を控除した金額


3. 現行制度との比較現行制度との比較

上述のとおり、本改正により令和7年分以降の所得の計算上、株式譲渡による所得税負担が増加する可能性があります。

設例を前提とすると、現行税制の税負担と改正後の税負担との比較で、5,300万円の税負担が増加することとなります。


4. おわりにおわりに

非上場株式を譲渡した場合の譲渡益に対する課税は20.315%で固定化されているというこれまでの常識が本改正で覆ることとなり、株式譲渡に際しても、スキームの検討がより重要になると考えられます。

広尾税理士法人では、M&A経験豊富な税理士が株式譲渡に関する税金の手続きに留まらず、相続対策も含めたスキーム提案や株式譲渡プロセスについても一気通貫でご支援する体制が整っておりますので、ご関心のある方はお気軽にお問合せください。


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